座る場所が少ない

世の中、座る場所が少ない。

 

出歩いてる時に何か思いついたこと(鏡の盾以外でメデューサを倒す方法など)があって、「あ、ちょっと書きとめとくために座りたい(何と言っても自分はアキレウスだから)」と思っても、座れる場所を探すことはなかなか容易ではない。人の多い街中にいる時などは、特に座れない。座りのVERY HARDモード。

無料で座れる駅や広場のベンチなどは、「すでに自分よりも先に座りたかった人」で埋め尽くされているし、コーヒーショップを利用しようとしても注文までの長蛇の列を見るだけで嫌気が差し、花壇のヘリなどに座ろうとすると「ここって過去に絶対誰かゲロ吐いてるよな」という思いが去来し、かといって「えいや」と路上に腰を下ろすのも気が引ける。

もし自分にそういうことをする自由が与えられるのであれば、都会のふとした路地裏の空間に、椅子を置いておきたい。そこでは誰もが腰をおろして思索する自由が与えられる。もちろん本を読むのだっていい。うっとりとTwitterを眺めるのもいい。飲食は椅子が汚れる気がするので禁止だ。極端に長居されても困るので、あまり座り心地の良すぎない椅子にする。

椅子を置いたら、「今日は座ってるかな~?」と時折様子を見に行く。人が座っていれば「うん、いいじゃん」と思い、座ってなければ懐から小さなブラシを取り出して、スッスッと椅子の上を軽く掃いてやる。そしていつかカップルがいちゃつきながら座っている(彼氏のヒザの上に女が乗っている)のを見て、こう言うのだ。

 

「やめなさい」(上ずった声で)